10年間日本全国の高校生を撮り続けてきた写真家・小野啓が新作のテーマとして選んだのは、ライヴアイドル「BELLRING少女ハート」。そこにはライヴハウスの暗闇で躍動するメンバーと彼女たちを熱狂的に支持するファンの姿があった。闇の中にある光を求めて、写真家はフィルムカメラを片手にライヴに通いつめ2年半の歳月をかけ、ステージの情景だけでなく狂乱するファンの姿、バックヤードにおけるライヴ前のメンバーの緊張感と持てる力を燃やし尽くしたライヴ後の彼女たちの切実な姿にもためらわずにカメラを向けた。そして、写真集は厳選したカットを集約し、500頁を超えるまさに渾身の一冊に。同書はライヴアイドルの世界に写真で肉迫した唯一無二のドキュメンタリーである。
小野啓写真集 暗闇から手をのばせ/著者:小野啓/装幀:森大志郎/解説:沖本尚志(編集者)/判型:A5変形/総頁数:512頁/製本:並製/発行・発売:silverbooks/発売予定日:2017年11月19日/予定価格:4,500円+税/ISBN:978-4-909435-01-9
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小野啓
1977年京都生まれ。2001年、立命館大学経済学部卒業。2003年、ビジュアルアーツ専門学校・大阪写真学科卒業。2002年より日本全国の高校生のポートレートを撮り続けている。2006年、写真集『青い光』(青幻舎)で注目され、2013年に10年間の集大成となる『NEW TEXT』(赤々舎)を刊行。第26回「写真の会」賞を受賞。乃木坂46「ハルジオンが咲く頃」のCDジャケットを手がけたほか、『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)、『アンダスタンド・メイビー』(島本理生)など文芸書の装丁写真も数多く手がけている。
http://www.onokei.jp
BELLRING少女ハート(べるりん・しょうじょ・はーと)
2012年4月に、映像ディレクターだった田中紘治氏のプロデュースで誕生、活動をスタート。通称“ベルハー”。黒いセーラー服に黒い羽根をまとい、60年代サイケデリック・ロックからグランジ・ロック、エレクトロニカなど幅広い音楽性を誇るライヴアイドル・ユニット。結成当初は未完成なパフォーマンスから「学芸会以下」などと揶揄されたが、のちに独特の楽曲と激しく切れ味の鋭いステージパフォーマンスで唯一無二の世界観を作り、音楽ファンやアイドルファンから熱狂的な支持を得る。2016年10月時点でのメンバーは朝倉みずほ、柳沢あやの、カイ、甘楽、仮眠玲菜。2016年末をもって活動を休止。朝倉が卒業、柳沢がソロ活動へ移行、甘楽(ヨネコ)は新ユニット「MIGMA SHELTER」のメンバーに。2017年2月より「There There Theres」(ゼアゼアゼアーズ)が後継ユニットとして活動中。
http://aqbirec.com/ttts/
ライブアイドルのBELLRING少女ハート(ベルハー)の現場を追ったドキュメンタリーです。『アサヒカメラ』2014年11月号でポートレートを撮り下ろしたことを機に、初めて訪れた地下アイドルの現場には、得体の知れないエネルギーのようなものが渦巻いていた。命を削るようなメンバーとオタクが熱狂するフロアとの交錯。そしてアイドルたち自身が何を思い活動しているのか。都内のライブハウスで夜な夜な行われている現象に、謎とともに関心が深まっていきました。とにかく今この現場を撮らなければならない。運営に頼み、なんとか撮影にこぎつけて、2年半できる限りそれを繰り返したのがこの作品です。
本当の意味でこの撮影に嵌まっていくようになったのは、当時の主要メンバー2名が突然グループ脱退を発表した瞬間に、もう2度と同じ光景は訪れないのだという、何か写真行為そのものと近いものを感じたことがきっかけです。それは永遠にループするようにも思われた平和な日常に突然、亀裂が入る感覚でした。その後、ベルハーとファンによる現場はますます激しさを増していきますが、図らずもグループは終焉へと向かって走っていくことになります。
撮り続けると、ある種の真実のようなものが必ず見えてくると思っていた。そこに居続けることは肉体的にも精神的にも決して容易ではなかったけれど、この写真がどこに向かっていくのか、ただそれを知りたくて立っていた気がします。被写体は確かにアイドルの現場ですが、この作品はいわゆるアイドル写真、ライブ写真ではなく、人間とは何か?というテーマが根底にあります。それはメンバーたちだけでなく、運営、ファンも含めてです。写真にはやはり生々しい人間そのものが写っていると思う。この世界を通して見えてくる人間の姿です。
小野啓